映像音楽

【WXⅢ 機動警察パトレイバー the Movie3】ベートーヴェン”悲愴”のカオス感【BGM制作参考作品】

BGM制作作品考察、今回は2001年に公開された映画「WXⅢ 機動警察パトレイバー the Movie3」です。

漫画版で描かれた長編「廃棄物13号」をベースに、とり・みき氏の脚本を加えた異色作。というか、主人公はオリジナルキャラの2人の刑事、第二小隊やイングラムもほとんど出てこないため、もはやパトレイバーと呼んでいいのかすらわからない作品です。

劇場版1,2同様、音楽は巨匠 川井憲次氏。

大ヒットシリーズ劇場版第3作。

レイバーを狙う破壊活動が続く東京湾沿岸。城南署の刑事・久住と秦は捜査の途中、湾岸の備蓄基地で人間を食い殺す“怪物”に遭遇する。

その“怪物”の肉片から判明した事実が、状況を一変させ…。

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パトレイバー3 作品考察

漫画版との相違点

この作品、ゆうきまさみの漫画版の長編「廃棄物13号」がベースとなっていますが、ストーリーはかなり異なります。

漫画版は「巨大ロボットvs怪獣」のようなエンタメ性が強調された作品になっています。ニシワキ・セルをめぐる研究所内での確執、東京湾に沈んだ黒いレイバー”グリフォン”回収に動くシャフトの暗躍など、見どころも多いです。

対してこちらの劇場版は全体を通してかなり陰鬱な雰囲気です。

主人公は2人の刑事

主人公はベテラン刑事の久住と、パートナーである泰の刑事コンビ。久住刑事は特車二課の後藤隊長と旧知の仲であり、泰刑事は物語のキーマンである科学者 岬冴子に恋心を抱いていきます。

久住刑事はアナログレコードが趣味。この趣味と、持ち前の洞察力と行動力が事件解決の糸口を掴みます。

それにしても高価そうなオーディオシステムとレコード群です。奥さんに逃げられたという設定のようですが、この趣味と仕事では逃げる気持ちも理解できます(笑)

科学者 岬冴子の設定

漫画版にも登場する科学者、岬冴子は設定がかなり変えられており「死んだ娘のガン細胞とニシワキ・セルを融合させて怪物を作り出す」という、かなりのマッドサイエンティストとして描かれています。

娘への執着はもはや狂気を通り越してホラー。部屋一面に引き伸ばされた娘の写真は、初見ではかなりビビります。

これ、リアルに実物を見たとしたら相当怖いだろうな…。

さらに終盤では、廃棄物13号の異形ぶりを見てなお「娘は生まれ変わった。まるで夢を見ているようだった」と語ります。平然とした表情で恐ろしいこと言ってます。

廃棄物13号

そして冴子いわく「娘の生まれ変わり」である怪物、13号。こちらもかなりグロテスクなデザイン。

進撃の巨人のごとく警官や一般人を次々と捕食。かなりコワイ。

漫画版と違い、犠牲者の数も相当です。

最後には娘の意思が残っているかのような描写もあります。ガン細胞に人の意思が宿るというのは無理があるような気もしますけどね。。

自衛隊の石原吾郎

個人的に好きなのはオリジナルキャラクターである自衛隊の石原。前作「P2」の荒川ほどではないにせよ、独特の存在感を示します。

第二小隊を激励しつつも、自衛隊の火炎放射作戦による介入を後藤にさえ悟らせなかった切れ者。どことなくシャフトの黒崎を彷彿とさせます。

…というか、この自衛隊による焼却作戦をなぜ第二小隊に隠していたんでしょうね?

「特殊弾で弱らせたところを火炎放射器で焼却する作戦」もしくは「万が一、第二小隊が怪物を撃ち漏らしたときの保険」としての自衛隊介入であれば、別に内緒にしておく必要もないと思うんですが…。

誰も救われない結末

物語としても、結局誰も救われない悲しい結末です。

  • 13号の生みの親である冴子は投身自殺。
  • 泰刑事は好意を寄せる冴子が目の前で自殺。
  • 廃棄物13号は、人間としての意識があると思わせる描写の直後に焼却処分
  • 第二小隊は役割は果たしたものの実は信用されておらず、自衛隊は最初から13号を焼却処分する算段だった
  • そもそも第二小隊の出番がほとんどない


とまあ、救いようのない結末です。。ストーリー自体は面白いんですけどね。

イングラムちょっと活躍

とはいえ、終盤のイングラムvs廃棄物13号のバトルシーンは純粋に面白かったです。やっぱイングラムのデザインはカッコいい。ユニコーンガンダムより好き。

漫画版では特殊弾は2発用意されており、命中させるのは野明の1号機ですが、今作では特殊弾は1発のみ。太田巡査の2号機が見事命中させます。

パトレイバー全編を通しても、太田の数少ない見せ場です。

今回、野明や遊馬はそこそこセリフもありますが、進士さんはあんまり活躍しません。ひろみちゃんに至ってはほとんど登場せず、セリフすらありません。ヒドイ!

そういえば原作の「廃棄物13号」では活躍した第一小隊も全然出てこないな…。

というか、このエピソードなら熊耳さんも登場して良さそうなモンですけどね。劇場版には一度も登場していないのが残念です…。

パトレイバー3 音楽について

劇場版第2作を踏襲

音楽は前作「パトレイバー2」と同様、作品全体の不穏な空気を表現するかのような静かな曲が続きます。

しかも前作とは違い、東京爆撃などの派手なシーンもないため、BGM自体のインパクトも前作よりも抑えめになっています。個人的には劇場版1,2のほうが音楽は好きです。

ベートーヴェン”悲愴”

しかしこの作品の音楽のポイントは、何といっても最後のイングラムと廃棄物13号の格闘シーンでしょう。何しろ巨大ロボットvs巨大怪獣という場面のBGMが”ベートーヴェンの悲愴”です。この違和感によるインパクトは絶大。

さらにこのベートーヴェンの”悲愴”、聞いてみるとわかるんですが、そんなに悲愴な感じじゃないんですよね。むしろ平和な雰囲気の美しいピアノ曲です。

「全体的に悲愴な物語の終盤、巨大ロボット対巨大怪獣というシチュエーションに”悲愴”という曲名のあんまり悲愴感のない曲が流れ、この曲を聞いた怪獣が人間の意識を取り戻したと思ったら、巨大ロボットにボコられて自衛隊に焼き殺される」という状況。

文字にするとシュールだな…。

まとめ:おっさんがいい味出してる映画

それにしても、劇場版は3作品とも共通して「2人のおっさんが東京の下町をウロウロする」という長いシーンがあるのが特徴的ですね。

1作目は松井刑事と片岡刑事。2作目は後藤隊長と荒川さん。

本作でも、後藤隊長と久住刑事が観覧車に乗ったり、駄菓子屋でアイス食べたりするシーンが微笑ましいです。

おっさん2人が歩いてるシーンにそれぞれ別のBGM作るのは、けっこうアイデアが偏りそうで大変な気がします(笑)

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