私、実は若い頃は妙に霊感が強く、普通ではなかなか体験できないような数々の不思議体験(アホ体験)をしてきたんですよ。
中学生の時、自転車に乗ってたらネコバスに轢かれたことがあります。ドーンって。
病院行け。外科じゃなくて精神科な。
今回の話は、私のアホな体験談の中でもトップクラスの危険度(?)を誇る内容です。私の人生観にもちょっとだけ影響を与えた、なかなかに強烈な体験でした…。
人材派遣会社からの依頼
イベント警備のアルバイト
もう25年以上も前の話です。
私は音楽の専門学校に通うかたわら、イベントの設営や警備を主に行う人材派遣会社でアルバイトをしていました。
この人材派遣会社の仕事は多岐に渡り、アーティストのライブ設営や遊園地などでのイベント会場づくり、さらにはラーメン屋のビラ配りや路上のゴミ拾いまで、いろいろな仕事を体験させてもらったのを覚えています。
東京ドームとかで大物アーティストのライブ設営を徹夜でやったのとか、かなり大変だったけど面白かったなぁ。
それはなかなか貴重な体験だねぇ。
新規の仕事依頼
ある日、私の自宅に派遣会社から仕事依頼の電話が来ました。
来週の土曜日なんだけど、仕事入れられるかな??
両国国技館で半日拘束ぐらいなんだけど。
両国国技館…。それだけ大きな会場であれば、相当大物のアーティストのライブか、スポーツ関連のイベントだろうか…?
どちらにしても面白そうな仕事に違いない。
あ、大丈夫ですよ〜。誰かのコンサートですか??
いや、新興宗教の集会の警備。
ああ、宗教の集…
…なんですと!?
いちど大丈夫と行ってしまった手前、断るわけにもいきません。私はこの仕事を受けることにしました。
これが、私の人生最大のカルチャーショックを受けることになった貴重な体験の幕開けでした。。。
仕事当日
さて本番当日。私を含むアルバイトのメンバーはちょうど正午に両国国技館に集合しました。
スケジュールはこんな感じ。
- ステージセッティング 2時間ほど
- 入場客の列整理などの庶務
- 集会本番の警備
- 後片付け、撤収
これは普段のイベントセッティングと同じような流れです。
ステージセッティング
まずはステージセッティングです。
今回は教祖様の演説がメインらしく、音響設備と大型のスピーカーを複数台、ステージや客席に積み重ねていきます。
重労働ではありますが、ジャニーズ系などのコンサートでは会場設営で丸3日、アルバイトスタッフ動員数も200人とかの規模になることもあるため、そのあたりと比べれば楽な仕事です。
客(信者)入場
セッティング作業終了後は、お客さん(今回の場合は信者の皆さん)の入場です。
どうやらこのイベントは、全国から信者が集まる一大イベントらしく、国技館に集まった信者はおそらく数千人近かったと思います。
客層も色々で、サラリーマンと思われる中高年層から主婦、そして意外にも若い女性も多数いました。
本番中はアルバイトのメンバーはスーツに着替え、決められた位置に警備としてずっと立っています。警備と言っても、実際にやることは道案内ぐらいなんですけどね…。
この日、私はステージのすぐ下、客席に向けた巨大スピーカーの目の前に配置されました。
この配置が、後に私を恐怖のどん底に突き落とすことになるのですが…。
イベント本番
教祖登場
ほどなくして、教祖と思われる男性と、教団の幹部と思われる数人の男性がステージに登場。
教祖の男性が演説のため、ステージ中央に立ちます。
信者の皆さん、本日はお集まりいただきありがとうございます。
※教祖イラストはイメージであり、本人とは全く無関係です
教祖はおそらく180cmを超える長身。なかなかに威厳のある雰囲気で、その独特の存在感はさすが教祖を言えるものでした。
演説開始
そして教祖の演説が始まりました。
演説の内容は、まあ想像通りの新興宗教的な内容です。「学者は嫌い」「医者は当てにならない」といった内容の話を、ジョークを交えた妙に説得力のある口調で説いていきます。
不運なことに、私の配置された警備位置は大型スピーカーの真正面だったため、うるさくて仕方ありません。。
でもまあ、この演説さえ終われば今日の仕事はほぼ終わったも同然。楽勝だな…などと考えていました。
空気が一変
そして演説開始から40分ほど経過し、私が興味のない話にだんだん飽きてきたころ。
では、そろそろ休憩時間に入りましょう。
私はその言葉を聞き、一瞬、気を緩めました。
…その一瞬の気の緩みこそが、私の最大の失敗でした。
唐突に、まさに唐突に、教祖は割れんばかりの大声でマイクに向かって叫んだのです。
みなさぁ〜〜〜ん!!!
!!??
大型スピーカーの前に配置されていた私は、その唐突な怒号に心臓が口から飛び出るほどビビりました。一瞬でチビる寸前です。
それと同時に、会場全体に一瞬にして「ざわっ」とした気配が広がります。カイジの背景じゃないんだから。
文字通りの「空気が変わる」という感覚を、私は初めて体験しました。
続けて教祖が叫ぶ!!!
最高ですか〜〜〜!!??
( Д)゜゜…!?!?!?
呆然とする私など無関係に、
会場の数千人の信者がそれに応える!!
最高〜〜〜!!
国技館が、震えた。
狂宴
オイオイオイなんだこれヤベーぞこれヤベー
混乱する私などそっちのけで「最高〜!」の大合唱。
ホントにね、両国国技館が揺れるんですよ。ゴゴゴゴって。ジョジョの背景じゃないんだから。
教祖のありがたいお話
教祖の話は、要約すると以下の通り。(25年前なのでうろ覚えですが…)
- 自分にしか聞こえない神の声を伝えるのが自分の役目(天声というらしい)
- 天行力という力を扱うことができるらしい
- 教祖様が天行力を加えた水を飲むと、信者にもその力が伝わるらしい
- 信者たちは「天行力指輪」「天行力手帳」といったアイテムを所持することにより力の恩恵を受けることができる
- 足裏診断により、医者にも分からないような病気を見つけることができる
…胡散臭すぎるだろ。
こんなワケわからんこと言ってるのに、会場にはすごい数の信者がいます。どういうこっちゃ…。(後に知ったことですが、サクラも結構な人数いたらしいです)
クライマックス
天行力水を飲み、指輪に祈りを捧げる信者たち。
場内のいたるところから「最高!」という叫び声が聞こえてきます。最低だ。
そして集会はクライマックスを迎えます。
この宗教には歌があるらしく(校歌とか社歌のようなイメージ?)、それを全員で斉唱し始めました。
そりゃーもう、右だか左だかの軍歌を彷彿とさせる歌です。いや実際には普通の歌だったのかもしれませんが、その場の雰囲気により完全に軍歌になってました。
ここからがヤバかった…。
斉唱中、興奮していてもたってもいられなくなった信者どもがステージに押し寄せてきたのです。
先述の通り、わたしの警備位置はステージのちょうど真下。この近辺に配置されたアルバイト警備員は文字通りもみくちゃにされます。
さらに、会場のいたるところで興奮しすぎた信者が意識を失い、ぶっ倒れていきます。まさに阿鼻叫喚。阿鼻叫喚ってこういうときに使う言葉なんだなぁ。
普通に怖すぎる。なんなのこの空間。
あ…俺ここでお星さまになるのかな…。
そんな私の絶望などお構いなく、信者たちの興奮度はMAXのまま、集会は幕を閉じたのでした。
貴重な経験
終わってみれば笑い話みたいなモンですが、現場では死ぬほど怖かったです。
「カルチャーショック」という意味では、25年以上経った現在でも、これに勝る経験はないかもしれません。
この宗教、この数年後に教祖が詐欺罪で逮捕されて消滅しましたが、教祖の出所後は名前を変えて復活し、現在も存続しているらしいです。
教祖が逮捕された後、今なお信者がいるっていう時点で全く理解できませんが、まあ多様性の時代っていうし、こういうのもアリなのかなぁ…。
とりあえず皆さん、変な壺とか変な水とか変な指輪とかは買わない方が良いですよ。最高になっちゃいますよ。