1970年代に活躍した兄妹デュオ「カーペンターズ」。説明するまでもなくポップ・ミュージックの世界最高峰と言える存在です。
数多くの名曲を残したカーペンターズですが、今回は彼らの歌ではなく、曲のイントロに着目したいと思います。
曲と歌声に注目しがちですが、カーペンターズの曲はイントロ部分から非常に印象的で心惹かれるものが多いです。普段とは少し違う目線で楽しんでみてはいかがでしょうか。
カーペンターズ:素晴らしいイントロの数々
Top of the World
日本では「イエスタディ・ワンスモワ」と並ぶカーペンターズの代表曲。「トップ・オブ・ザ・ワールド」は直訳すると「世界の頂点」。
”私は空のてっぺんから地上を眺めている気持ちなの。あなたの愛で私の気持ちは世界のてっぺんに押し上げられたから”という、とっても詩的なラブソングなのです!
イントロの印象的なフレーズはスティール・ギターという楽器。ギターと言いつつテーブル型で、ハワイアン音楽で使われることが多い楽器ですが、この曲のようにウエスタンやカントリー音楽の雰囲気を出すことも得意です。
演奏しているのはスティール・ギターの名手、バディ・エモンズ(1937-2015)。
イントロ後半のエレクトリック・ピアノによるコードフレーズのほうが有名ではありますが、このスティール・ギターのノリの良い楽しげな雰囲気も素晴らしい。
楽曲全体に広がる幸福感を予感させる、つかみとしては最高のイントロです。
I Need to Be in Love(青春の輝き)
生前のカレン・カーペンターがもっとも好きだったと語る1曲。
タイトルは直訳すると「恋をしなくてはいけない」なので、この「青春の輝き」という和訳は無理やりながらなかなかのハイセンス。
ちなみにグーグル翻訳で「I Need to Be in Love」と入れると「青春の輝き」と訳されます。洒落てはいるけど、翻訳機としてはこれでいいのか(笑)
冒頭のピアノによるコードフレーズがとにかく印象的。ここからフルート→オーボエと美しいメロディが続きます。なんかイントロ聞いただけで泣けるフレーズです。というより、イントロだけで曲として完成してます。
このイントロ冒頭のピアノは、1976年にリリースされたシングルバージョンではカットされており、ピアノイントロ付のバージョンはアルバムバージョンにのみ収録されていました。
日本では長らくイントロカットバージョンが定番でしたが、1995年にテレビドラマ「未成年」でこの曲が使用されて以降はフルバージョンのイントロが定着しました。
Superstar
曲名だけ聞くと物凄い華やかな曲を想像してしまいますが、実際には切なすぎるスローバラードです。
”昔好きだった人がデビューして手の届かないところに行ってしまったけれど忘れられない”みたいな感じの曲。
メインメロディと同じ、物悲しいフレーズを奏でるオーボエ。カレンによる冒頭の「Long Ago…」のフレーズと重ね合わせることで、さらに切なさが強調されます。
カーペンターズは、実は曲中のフレーズをそのままイントロや間奏に使う曲はそれほど多くありません。曲中の印象的なフレーズをイントロに持ってくることによりインパクトが大きくなり、この曲にカーペンターズの代表曲と言われるほどの印象をもたせています。
現代ではあたりまえの手法と言えますが、メロディに十分なインパクトがないと、ここまで印象的な曲にはならないでしょう。
Close to you(遥かなる影)
恋する女性の気持ちを歌ったラブソング。
直訳すると「あなたの近くに」なのですが「遥かなる影」と和訳するとは深いですね。「あなたの影のようにそばにいたい」とか、そんな感じでしょうか?
ちなみにこの「Close to you」をグーグル翻訳にかけると「あなたの近くに」と訳されます。さすがに「青春の輝き」のようにはいかないか(笑)
イントロは4小節のピアノフレーズ。短いですが「ポップで楽しげな恋心」の雰囲気は十分に伝わってきます。
曲全体を通してピアノによる8分音符刻みの伴奏なのですが、このイントロのピアノのみ1オクターブ高く、曲全体の軽快さ、楽しさを演出しています。それでいて、カレンの歌声と合わさると大人の雰囲気が全面に出てくる、ちょっと不思議な曲調です。
Rainy Days and Mondays(雨の日と月曜日は)
個人的にはカーペンターズでもっとも好きな曲です。まあタイトル的には、休日明けの月曜日に雨なんて最悪ですけどね(笑)
この曲もサビといえるメインメロディをそのままイントロに持ってきています。一度聞いたら忘れられないフレーズを冒頭に持ってくることにより、一層メロディを印象づけています。
なにより、トミー・モーガンによるハーモニカが素晴らしい。これ宴会芸として演奏できたら人気者になれそう。
SING
セサミストリートの挿入歌として作られたという経緯もあり、日本でも子どもの歌としてメジャーな曲です。
私も子どもの頃に日本語歌詞で歌った記憶があります。曲中に少年少女合唱団によるコーラスが入るのが印象的。
イントロのキャッチーなフレーズがリコーダー(?)→トランペットによって奏でられます。途中の子どもたちのコーラスも同じフレーズなので印象に残りますね。
このリコーダーは曲中でもオブリガートとして登場し、可愛らしさを演出しています。
Ticket To Ride(涙の乗車券)
曲としてはビートルズのほうが有名かもしれませんが、メロウにアレンジされたカーペンターズのカバー版もカッコイイ。
まるでピアノ練習曲のようなアルペジオから、流れるようにオーケストラに入るイントロが非常に美しいです。
楽曲自体も、歌入り部分のピアノソロの伴奏からサビに向けてオーケストラになっていく構成で、この流れを予感される秀逸な作りのイントロになっています。
まとめ
今回はイントロの印象的なカーペンターズの名曲をピックアップしてみました。
普段から聞き慣れている名曲の数々ですが、少しだけ視点を変えて聞いてみると、新しい発見もあるかと思います。ぜひイントロやアウトロ、間奏部分にも耳を傾けていただければと思います。
ちなみにカーペンターズといえば「イエスタディワンスモア」も有名ですが、この曲は歌始まりでイントロがないので今回は除外してます。