DTMで打ち込みをするとき、リアルな雰囲気を出すのが難しいと言われているのがエレキギターと木管楽器です。
そして、木管楽器の中でも特に打ち込みが難しいのがサキソフォン。
サックスの独特のニュアンスと空気感を出すのは非常に難しく、テキトーに打ち込んでしまうと機械的な雰囲気になってしまい、ニセモノ感が強く出てしまいます。
今回は、サックスのソロプレイをできるかぎりリアルに表現するための手法について記載していきたいと思います。
今回はLogic Pro標準装備の音色をメインに使用するため、DAWはLogic Pro限定のお話になります。
Logic Proは標準装備のシンセやプラグインが強力なので、初心者からプロまで幅広くおすすめです!


Logic Proでのサックスソロ打ち込み
今回は私のオリジナル楽曲を題材として進めていきたいと思います。
まずは完成版の動画を聴いてみて下さい。
それなりにソロサックスの雰囲気が出ていると思います。この雰囲気を出すための打ち込みテクニックをご紹介します。
音色
まずはサックスの音色ですが、これはLogic Proデフォルトの音源「Studio Hones」を使用します。Logic Pro10.4以降であれば入っているはずです。

音色リストから「Studio Horns→Single Instruments→Studio Alto Sax 2」を選択。
そのまま使うとクレッシェンドの幅が大きくて使いにくい印象を受けるかもしれませんが、この音色はノートごとにアーティキュレーションを設定することが可能です。
アーティキュレーション
サックスのような微妙なニュアンスの楽器をリアルに表現するには、アーティキュレーションの設定が欠かせません。
- メロディ入力後、アーティキュレーションを設定したいノートを選択。
- 左側インフォメーションバーにある「アーティキュレーション」をクリック。
- 設定したいアーティキュレーションを選択

この音色の場合は、下記の9種類のアーティキュレーションが用意されています。

- 【Sustain】
ストレートな音を出します。ビブラートやクレッシェンドはかかっていません。 - 【Staccato】
音を短く切ります。アップテンポの曲で連続してスタッカートを使うとカッコいい。 - 【Expressive Medium】
デフォルトのアーティキュレーション。基本的にはこれで入力していきます。ただし強烈なクレッシェンドが入っているため、ロングトーンには不向き。 - 【Expressive Short】
Midiumよりも早いタイミングでクレッシェンドが入ります。使い所が難しい。 - 【Fall Long】
少し長めのフォールダウン。 - 【Fall Medium】
中間的な長さのフォールダウン。 - 【Fall Short】
かなり短めのフォールダウン。アップテンポの曲で使うと効果的 - 【Doit】
いわゆるフォールアップ。ファンク系の曲で使うと非常にカッコいいですが、使いすぎるとクドいので、ここぞという場面で使用すべき。 - 【Trill】
半音違いの音を連続して出す技術。これもDoit同様、ここぞという場面で使うと非常に効果的です。
デフォルトでは「Expressive Medium」に設定されています。基本的にはこれをメインに入力していき、必要に応じてアクセント的に他のアーティキュレーションを入れていく感じです。
「Expressive Medium」は使いやすいアーティキュレーションですが、長いノートでは大きめのデクレッシェンド、クレッシェンドが入ってしまいます。ロングトーンを表現する場合は「Sustain」に設定しましょう。
アーティキュレーション応用
「ロングトーンのあとにフォールダウンを入れたい」という場合は、ロングトーンノートの後ろに、ベロシティを小さめにした短いノートを追加し、このノートのアーティキュレーションを「Fall Long」などに設定すると良い感じになります。

ピッチベンド
サックスの打ち込みをするとき、ニュアンスを表現するためにノートの頭にピッチベンドを入れたくなってしまいますが、これをすると一気に打ち込み感(手作り感)が出てしまいます。
ノートの頭にピッチベンドをかけるのは極力控えましょう。
ノートの頭は短いノートで装飾音を入れると自然な雰囲気を出せます。

短い装飾音のアーティキュレーションは「Expressive Medium」のままで大丈夫です。ヘタに「Staccato」などに設定すると違和感が出てしまいます。
ちなみにピッチベンドはロングトーンの終盤にビブラートをかけたいときに使うと効果的です。
もちろんプラグインでビブラートをかけても全然良いのですが、ピッチベンドで自由なタイミングでビブラートをかけてみるのもなかなか面白いです。
ただし、やりすぎると違和感が出てしまうので注意しましょう。

ベロシティ
「Studio Horns」はベロシティでニュアンスがかなり変化します。
ケースバイケースではありますが、サックスの場合は「高音域に向かう場合はベロシティを少し上げ、低音域に下がるときにはベロシティを少し下げる」を基本とし、曲の雰囲気に合わせて微調整を加えていきます。
参考までに、この曲のベロシティはこんな感じです。

リバーブ
今回はLogic付属の「Silver Verb」を使用していますが、これは好きなプラグインを使用して良いです。
サックスのリバーブのおおまかなポイントは以下のとおりです。
- ジャズのような生々しいライヴ感を出したければリバーブはかなり浅め
- スムース・ジャズやフュージョンのようなジャンルでサックスをメインにするときは深めリバーブ
- J-POPなどのバックとして鳴らすときはその中間
今回の題材曲では、やや深めのリバーブを加えています。
仕上がり
上記の設定を加えたサックスパートをソロで再生すると、こんな感じになります。
サックスだけで完成するのであればもっと追い込むこともできそうですが、今回はピアノ、ベース、ドラムとのアンサンブルですので、Mixでの余白を残す意味でもこのぐらいの仕上がりにしておきました。
完成品をもう一度置いておきます。

まとめ
Logic Proの「Studio Horns」を使用することにより、なかなかリアルなサックスソロを表現することができます。
DAWのデフォルト音源でこれだけの表現ができるのは、かなりのコスパだと言えるのではないでしょうか。
もちろん、サードパーティ製のサックス音源はたくさん発売されていますので、この音色にこだわらずにケースバイケースで音色を選んでいくことも大事です。
自分にあったDAWや音源で、リアルを突き詰めていきましょう。日々是精進。
補足
今回の記事で使用した楽曲ですが、ピアノは「Ivory II Studio Grand」、アコースティックベースは「Trilian」を使用しています。
どちらのクオリティの高い定番音源です。
また、使用した楽曲は著作権フリー音源販売サイト「AudioStock」で販売しています。気になった人はぜひチェックして下さい〜。